2020年11月に発売されたMacBook Air、MacBook Pro 13インチ、Mac mini にはIntelではなくARMのM1チップが搭載されました。
という疑問があると思います。
この記事を書いている僕は・・
僕はIT系の仕事をしている関係上、コンピュータのハードウェアについては一応実務レベルの知識があります。
また、これまで10年以上MacBookを使ってきた昔からのMacユーザーでもあります。
そんな僕がM1チップを搭載したMacbook Air(MBA) を買ったのでいろいろと調べてみていろいろわかってきたのでここで解説してみたいと思います。
どれぐらいすごいかを分かりやすくするために、インテルのプロセッサを搭載している現在最高性能のMacBook Pro 16インチ2019年モデル(MBP16)と比較してみました。
MBP16は構成を大幅にカスタマイズしており、その金額はなんと約48万円です。
一方、今回買ったMBAはこちらもカスタマイズしていますが約18万円。
その差約30万円です。
どちらの性能が高いと思いますか?
結論からいうと・・
ポイント
MBAの性能がMBP16よりも高い場合がある。
ただし、一部の処理ではMBP16のほうがMBAより性能が高い
でした。
という疑問もあると思います。
この疑問を持ったあなた、かなり鋭いです!
ノートパソコンのように物理的な制約がきついパソコンは万能ではありません。
M1チップのMacBook Airはどういう人に向いているのか、買って後悔しない人とはどんな人なのかも解説します。
目次
Apple M1チップ
このセクションではプロの視点からM1チップの特徴についてまとめています。
ややマニアックな内容を含みますので、性能の結果を知りたいという方は読み飛ばして次のセクションから読んでいただければOKです。
さて、AppleはこれまでIntelのプロセッサを使って、MacBookやiMacなどを作ってきました。
ところが2020年、AppleはARM社のプロセッサを搭載したMacbook Air、Macbook Pro, Mac miniを発売しました。
よく勘違いされていますがARMという会社自体がプロセッサを作っているのではなく、簡単に言うと基本的な設計データを提供しています。
それにAppleが手を加えて発売したのがM1チップです。
M1チップの特徴はユニファイドメモリ
M1チップは一般のコンピュータと違って、メモリがプロセッサと同じチップに搭載されています。
一般にはプロセッサとメモリは別々です。
メモリ用のスロットにDIMMと呼ばれるメモリを差して使います。
メモリはデータを格納しておく場所で、大きいほどプログラムを高速に実行できることが多く性能の面では有利とされています。
しかし、M1チップは増量しても16GBしかありません。
これは最近のノートパソコンの中ではそれほど多いとは言えません。
メモリが小さいですがプロセッサと近い場所にあるためデータの出し入れが高速にできるという特徴があります。
おそらく、Appleはこの少ないメモリを効率的に使うための恐ろしいほど地道な工夫をやっているはずです。
このあたりは世の中に情報が出てくることはありませんが、OSもハードウェアも一緒に開発しているAppleならではの技術といえるでしょう。
プロセッサを変更するって実は大変なこと
すでにAppleはARMのチップを使っていて、iPad系はこのARMのプロセッサが利用されてきました。
しかし、Macbook AirなどのMac製品はiPadとOSが違います。
MacOSと言われるもので、ARMというプロセッサでMacOSが動作する製品が世に出たのはこれが初めてです。
プロセッサが変更されるというのは、実はとても大きな影響があります。
OSやアプリケーションを作り変える必要があるからです。
ちなみに、Intel社が出しているプロセッサをずっと使い続けるのであれば、このような大幅な変更は必要ありません。
例えば、Intelのプロセッサが第8世代から第9世代にアップデートされても、基本的にはソフトウェアは変更しなくて良いのです。
しかし、それでもAppleはプロセッサを変更するという決断をしました。
実はAppleにとってプロセッサを変更するのはこれが初めてではありません。
過去にも2回プロセッサを変更するということをやっています。
彼らは高い技術力と経験があるのでこのような判断ができたのだと思います。
18万円のMacbook Airを48万円のMacBook Pro 16インチ2019年モデルを比較した結果
ではM1チップの性能はどのぐらい凄いのか、気になるところだと思います。
僕の普段の使い方で不満がでることはありません。
僕がMacBook Air でやっていることは
- Safariでネットサーフィン
- Adobe Acrobat でPDF を読む/メモ
- プログラムの作成とテスト実行
- Zoom などでTV会議
- MS Office 各種の実行
- Mail App でメール
- Evernote / Xmind などで情報整理
あたりですかね。
これらをやっている範囲でまったく不満はありません。
というか、ほぼすべてのアプリケーションを立ち上げた状態で使っていますが、それですら動作に不満を持ったことはありません。
普段使いで問題になることはなさそうです。
でもこんな使い方では真のポテンシャルが出ていません。
そこで、上位機種と比較しながらMacBook Air の性能を検証してみたいと思います。
対戦相手はMacBook Pro 16インチで、MacBook Airよりも上位機種に位置づけられるものです。
しかも2019年モデルなのでMacBook Pro 16インチのなかでは最新型。
ただし、M1ではなくIntelのチップを搭載しているモデルになります。
ちなみにMacBook Pro 16インチはカスタムしていて、簡単に言うと一番高性能なプロセッサ、メモリを最大まで増量しています。
ノートパソコンですが、メモリは64GBという大容量です。
そしてお値段、なんと48万円です。
より詳しい構成は以下の表にまとめておきます。
MacBook Air (MBA13) | MacBook Pro 16インチ (MBP16) | ||
プロセッサ | モデル | M1 | 第9世代 Intel Core i9 |
コア数 | 8 | 8 | |
周波数 | - | 2.4GHz(Turbo Boost時 5.0GHz) | |
メモリ | 容量 | 16GB ユニファイド | 64GB |
周波数 | - | 2,666Mhz | |
GPU | 8コア | AMD Radeon Pro 5500M (8GB GDDR6) |
なお、今回は性能を調査するためにGeekBenchを使いました。
M1チップの性能:シングルコア
まずはシングルコアの性能を比較してみます。
青色の棒グラフがM1チップを搭載したMacBook Air、グレーの棒グラフがMacBook Pro 16インチです。
縦軸はGeekBenchmarkのスコアで、棒グラフが高いほど性能が高いということになります。
Cryptoというのは暗号処理、Integerは整数演算、Floating Pointは浮動小数点演算のことを表しています。
どれもMBA13のほうが性能が高いことがわかります。
M1チップの性能:マルチコア
続いてマルチコアの性能です。
複数のコアを使って演算をした結果ということになります。
こちらは暗号処理を除きMBP16のほうが性能が高いという結果になっています。
暗号処理だけはMBA13のほうが性能が高い結果となりました。
M1チップの性能:GPU
最後にGPUの性能です。
GPUというのはグラフィック処理を司るものです。
簡単に言うと画像処理全般を請け負います。
GeekBenchmarkではGPUの処理能力を評価することができて、OpenCL Scoreという数値で出てきます。
MBA13のOpenCL Scoreは18,363。
一方MBP16は30,158でした。
GPU性能については、MBP16に軍配が上がる結果となりました。
MacBook Air M1 はこんな人におすすめ
シングルコアではIntelのプロセッサを搭載した最強のMBP16よりもMBA13が高い性能でした。
マルチコアでもほぼ同等、GPUではMBP16のほうが性能が高いという状況です。
GPUに関してはMBP16のほうが1.6倍高いスコアを出しています。
数値で見れば開きがありますが普通に使う分には問題ないでしょう。
MBP16はオプションでGPUを強化しているということも理由のひとつだと思います。
何より、MBA13ではそもそも高度な画像・動画処理をやることは想定されていないはずです。
この結果から、よほど特殊な使い方をしない限りMBAはおすすめです。
ブラウザを使う、写真を管理する、Office を使う、動画を観る、TV会議をする、ぐらいの使い方であればまったく不満なく使えます。
キーボードも改善されているので、タイピングもやりやすく使い勝手の面でも満足できるはずです。
それにバッテリーでの駆動時間は18時間もあります。
1日中外で使う場合でも電源の心配をしなくてすみます。
ではMBA13が向かない特殊な使い方というのは何か。
ひとつは動画の編集をバンバンやりたいというような場合。
カットしてテロップを入れるぐらいの簡単な操作であれば問題ありませんが、大きなデータに対してエフェクトをたくさん入れるような編集は向かないでしょう。
MBA13にはCPUを冷却するためのファンがついていません。
長時間の作業では高温になり本来の性能が出なくなることも考えられます。
もうひとつはよく使うアプリがマイナーな場合。
M1チップに対応していないか、対応していたとしてもまだバグが発生しているかもしれません。
一応アプリがM1に対応していなくても実行する方法はあります。
でもバグがあったり性能が下がったりと問題が発生することがあります。
自分がよく使うアプリがM1チップにネイティブ対応しているか確認しておきましょう。
こちらのサイトではどのアプリがM1チップに対応しているか検索することができます。
まとめ
この記事ではAppleの新型MacBook Air についてMacBook Pro 16インチとベンチマークしながら性能を比較してきました。
結果としてはGPU性能はMacBook Pro 16インチに軍配が上がりましたが、それ以外ではMacBook Air と同等か、むしろMacBook Airのほうが性能が高いということになりました。
プロセッサをARMにするという大胆な戦略変更を断行したAppleですが、その性能の高さに驚きました。
これから2年かけてAppleはARMに移行していきます。
移行の最初のプロダクトとしては大成功だと思います。
今後M1チップにネイティブに対応するアプリが増えていきます。
迷っている方は買いだと思いますよ。
ちなみに、MacBook Pro 13インチも同じM1チップを搭載しています。
大きな違いはファンの有無。
MacBook Pro 13インチには冷却用のファンが付いていますので、長時間にわたる高負荷な作業をする方はMacBook Pro 13インチも検討してみることをおすすめします。